TSMCの日本拠点:熊本の半導体工場JASMとは
JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)は、九州・熊本にあるTSMCの工場です。2024年12月に量産を始めました。第2工場は建設中です。日本政府は2つの工場に最大1.2兆円の補助金を認定しています。何をつくり、誰が保有し、TSMCの決算にどう表れるのかを、TSMCの開示資料と経済産業省の資料から説明します。
TSMCの半導体工場の大半は台湾にあります。ただ、米国、中国、日本にも工場を持ち、ドイツでも建設中です。日本の工場を運営するのはJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)です。TSMCが2021年12月、九州の熊本県菊陽町に設立した会社です。TSMCはJASMを「過半を保有する製造子会社」と呼び、この工場をFab 23と位置づけています。
JASMの株主は誰か
TSMCが大半を保有し、残りを日本企業3社が持っています。ソニーセミコンダクタソリューションズは設立当初から「20%未満」を出資しました。デンソーは2022年に「10%超」の出資で加わりました。トヨタは2024年、4社が第2工場を発表した際に参加しました。各社は、この出資後の持ち分を次のように示しました。
| 株主 | 予定持ち分(2024年2月6日発表) |
|---|---|
| TSMC | 約86.5% |
| ソニーセミコンダクタソリューションズ | 約6.0% |
| デンソー | 約5.5% |
| トヨタ | 約2.0% |
経済産業省は、これを出資完了後の持ち分としています。TSMCの2025年の年次報告書は、2026年2月28日時点の自社の持ち分を「約72.6%」としています。財務諸表では、2026年6月末時点で73%です。JASM自体は上場していません。TSMCは台北で2330、ニューヨークでTSMとして取引されています。詳しくはTSM対2330で説明しています。
第1工場は何をつくるのか
TSMCの最新プロセスではなく、成熟・特殊プロセスのロジック半導体です。TSMCは2021年の工場発表時、「22/28ナノメートルプロセス」を計画していました。2022年には「12/16ナノメートルFinFETプロセス技術」を加え、計画生産能力を12インチウエハー換算で月5万5,000枚に引き上げました。建設は2022年4月に始まりました。TSMCによると、「2024年12月に量産を開始」しました。TSMCの年次報告書は、2025年末時点でFab 23が量産する最先端プロセスを28ナノメートルとしています。
計画を認定した経済産業省は、主な生産品目を22/28nmと12/16nmのロジック半導体としています。生産能力は月5万5,000枚、顧客は「日本の顧客が中心」としています。TSMCは工場発表時、ソニーを「長年の顧客」と呼びました。JASMのほかの顧客は公表されていません。
第2工場はどうか
第1工場より大きく、計画は変わってきています。
| 第1工場 | 第2工場 | |
|---|---|---|
| 経済産業省の認定 | 2022年6月17日 | 2024年2月24日 |
| 補助金の上限 | 4,760億円 | 7,320億円 |
| 認定計画の投資額 | 約86億ドル | 約139億ドル(40nmを除くと122億ドル) |
| 認定計画のプロセス | 22/28nm、12/16nm | 6nm、12nm、40nm(40nmは補助対象外) |
| 認定計画の生産能力 | 月5万5,000枚 | 月4万8,000枚(40nmを含めると6万3,000枚) |
| 初出荷 | 2024年12月 | 認定計画では2027年10〜12月 |
数値は12インチウエハー換算で、経済産業省の認定資料と2025年10月の政策概要によります。TSMCは2024年2月、2つの工場を合わせると熊本の拠点は「月10万枚超の12インチウエハー」を供給でき、JASMへの総投資額は「200億ドルを超える」と述べました。
その後、計画はより新しい技術へ移っています。TSMCの年次報告書によると、第2工場は2025年10月に着工しました。TSMCは2026年10月15日の決算説明会で「日本では、第2工場で3ナノメートルを活用する計画が順調に進んでおり、量産は2028年の予定です」と述べました。経済産業省が公表している認定計画は、いまも6nmと12nmのままです。これらの数字が何を意味するのかは3nmと2nmとは何かで説明しています。
TSMCの中でJASMはどのくらいの規模か
今のところ小さな存在です。TSMCの生産能力は2025年に12インチ換算で1,700万枚を超えました。一方、熊本の第1工場の計画は月5万5,000枚、年間で約66万枚です。TSMCの財務諸表によると、JASMの2026年上半期の純利益は16.8億台湾ドルでした。TSMCは日本、米国、ドイツ、中国で受け取る補助金をまとめて開示しています。2025年に受け取った政府補助金は、合計で762.6億台湾ドルでした。
日本にとってなぜ重要か
経済産業省の認定資料は、この事業が「日本における先端半導体の安定生産や、日本における半導体産業の活性化にも資する」としています。認定資料には、JASMがウエハーを主に日本の供給企業から調達し、間接材料の50%超を地元企業から調達することを目指すとも記されています。工場ごとに地元で約1,200人を雇用する計画です。こうした工場に装置や材料を供給する日本の、半導体サプライチェーンでの位置づけは日本は半導体サプライチェーンのどこにいるのかで取り上げています。
TSMCにとってJASMは、現地パートナーと政府資金を得て台湾の外に建設している複数の工場の1つです。TSMCが半導体設計会社やほかのメーカーとどう並ぶのかは、ファウンドリー、ファブレス、IDMの解説と台湾の半導体株:どの会社が何をつくっているかをご覧ください。
出典
- TSMC to Build Specialty Technology Fab in Japan with Sony Semiconductor Solutions as Minority Shareholder (Form 6-K, November 9, 2021)
- DENSO to Take Minority Stake in JASM (Form 6-K, February 15, 2022)
- JASM Set to Expand in Kumamoto Japan (Form 6-K, February 6, 2024)
- TSMC annual report (Form 20-F) for 2025
- TSMC consolidated financial statements for the six months ended June 30, 2026 (Form 6-K)
- TSMC third quarter 2026 earnings conference transcript (October 15, 2026)
- 特定半導体生産施設整備等計画の概要 (June 17, 2022)
- 特定半導体生産施設整備等計画の概要 (February 24, 2024)
- 半導体政策の動向 (October 2025)
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