なぜ1銘柄が台湾市場を動かすのか:TSMCとTAIEX
TAIEXは台湾証券取引所に上場するすべての普通株を、その時価総額全体で加重しています。2026年9月末時点では、TSMC1社が指数の41.12%を占めていました。指数の仕組み、そのウエートの計算、2026年の終値が示す動きを説明します。
台湾の主要指数が台湾積体電路製造(TSMC)に連動するのは、指数の仕組みによるものです。TAIEXは各銘柄を時価総額全体で加重します。そしてTSMCは、台湾証券取引所(TWSE)で群を抜いて大きな企業です。台湾先物取引所(TAIFEX)によると、2026年9月30日にTSMCは指数の 41.12% を占めていました。2番目に大きい聯発科技(MediaTek)は5.05%でした。つまりTSMCが1%動くと、他の銘柄を数える前に、TSMCだけで指数は約0.4%動きます。
以下の指数水準はTAIEXの終値(台湾証券取引所)です。株価は台湾証券取引所の終値で、単位は新台湾ドル(NT$)です。
TAIEXはどのように作られているのか
TAIEXは台湾証券取引所加権股価指数(Taiwan Stock Exchange Capitalization Weighted Stock Index)の略称で、TWSEが算出しています。算出方法の主なルールは次のとおりです。
- 構成銘柄: TWSEに上場するすべての普通株です。新規上場企業は、丸1暦月の取引を経た翌月の最初の営業日から組み入れられます。売買停止銘柄と全額交割銘柄(フルデリバリー銘柄)は除外されます。
- 加重方法: 各構成銘柄の約定価格に発行済株式数を掛けた値を合計します。浮動株だけでなく、発行済株式のすべてを使います。
- 算式: 指数=時価総額合計÷基準値×100です。基準は1966年の年間平均で、これを100としています。TWSEは公表開始を1970年11月としています。
- 連続性: 構成銘柄の追加・除外や新株発行などがあると、基準値を調整します。これらの変化で指数が動かないようにするためです。
- 配当: 価格指数は現金配当を調整していません。TWSEは配当を調整したトータルリターン版も公表しています。
- 算出時刻: 指数は取引時間中に5秒ごとに算出され、終値は取引終了後に1日1回算出されます。通常取引は台北時間の09:00から13:30までです。
構成銘柄の入れ替えと指数の維持管理は、TWSEに代わって台湾指数公司(Taiwan Index Plus Corporation)が担っています。9月30日時点のTAIFEXの一覧では、構成銘柄は 1,071 でした。
TAIEXの中でTSMCはどれほど大きいのか
TAIFEXは、各構成銘柄が指数の時価総額に占める比率を公表しています。この表は毎月末に1回更新され、参考用と明記されています。2026年9月30日の数値は次のとおりです。
| 順位 | 銘柄 | コード | TAIEX時価総額に占める比率 |
|---|---|---|---|
| 1 | TSMC | 2330 | 41.12% |
| 2 | 聯発科技(MediaTek) | 2454 | 5.05% |
| 5 | 日月光投資控股(ASE Technology Holding) | 3711 | 2.01% |
| 8 | 聯華電子(UMC) | 2303 | 1.24% |
| — | 2位〜11位の合計 | 19.75% | |
| — | 上位10銘柄の合計 | 59.83% |
TSMC1社だけで、続く10銘柄の合計の2倍を超えていました。残りの1,070銘柄で、残る58.88%を分け合っていました。
ウエートは固定ではありません。TSMCの株価が市場の他の銘柄に対して動くたびに、毎日変わります。そのため日付が重要になります。TAIEXは発行済株式のすべてを使うので、ある銘柄の指数ウエートは、構成銘柄の時価総額合計に占めるその銘柄の比率と同じです。
41%のウエートは指数の日々の値動きに何をもたらすのか
加重指数の計算は単純です。ウエート w の銘柄が x% 動くと、他の条件が変わらなければ、指数の値動きに約 w × x ポイントを加えます。41.12%の場合は次のとおりです。
- TSMCが+1%、他の銘柄がすべて横ばい:TAIEXは約 +0.41%。
- TSMCが+10%、他の銘柄がすべて横ばい:TAIEXは約 +4.1%。取引所によると、10%はTWSE上場銘柄が1日に動ける上限で、寄り付きの同時気配の基準価格から測ります。このルールは台湾の値幅制限の解説で取り上げています。
10月の2日間を見ると、その内訳がわかります。9月30日のウエートを翌日の値動きに当てはめます。
10月1日。 TAIEXは47,940.13から48,353.49へ +0.86% 上昇しました。TSMCはNT$2,480からNT$2,510へ +1.21% 上昇しました。ウエート41.12%で、TSMCの寄与は約0.50ポイントです。指数の残り58.88%が約0.37ポイントを加えました。残りの銘柄は平均で約0.6%上昇した計算です。
10月15日。 TAIEXは48,625.83から46,969.87へ −3.41% 下落しました。TSMCはNT$2,490からNT$2,440へ −2.01% 下落しました。ウエートは約41%なので、TSMCは指数を約0.8ポイント押し下げました。合計で約59%を占める他の銘柄が、残りの2.6ポイント分を占めました。平均で約4.4%の下落です。この日は、市場の他の銘柄がTSMCより大きく下げました。
つまり「TSMCがTAIEXを動かす」というのは、厳密な意味で正しいといえます。指数の日々の値動きは、TSMCの値動きの約10分の4と、それ以外のすべての銘柄の平均的な値動きの約10分の6の合計です。後者は同じ方向に働くことも、逆方向に働くこともあります。
2026年にTSMCとTAIEXはどれほど連動したのか
以下の数値は、2026年4月14日の終値から10月19日の終値までの128日分の値動きに基づいています。
- TSMCとTAIEXが 同じ方向で引けたのは97日、逆方向は22日でした。TSMCが変わらずだった日は9日です。
- TAIEXが2%以上動いたのは 25日 でした。TSMCは 25日すべて で同じ方向に動きました。
- TAIEXが3%以上動いたのは 13日 でした。そのうち4日は、TSMCが指数より大きく動きました。
- 上昇・下落を問わない1日の平均値動きは、TAIEXが 1.34%、TSMCが 1.48% でした。
逆方向に動いた日は、いずれも小さな値動きでした。そのうちTAIEXの値動きが最も大きかったのは7月22日の+1.34%で、この日TSMCは0.41%下落しました。
期間中で値動きが最も大きかった日は次のとおりです。
| 日付 | TAIEX | TSMC(2330) | 聯発科技(2454) | 聯華電子(2303) |
|---|---|---|---|---|
| 7月17日 | −6.47% | −7.29% | −8.92% | −10.00% |
| 7月31日 | +7.98% | +9.98% | +9.89% | +10.00% |
7月31日、TAIEXは39,933.30から43,119.75へ、TSMCはNT$2,205からNT$2,425へ上昇しました。7月17日、指数は45,624.98から42,671.27へ、TSMCはNT$2,470からNT$2,290へ下落しました。両日とも聯発科技はTSMCとほぼ同じか、それ以上に動きました。聯華電子はちょうど10%動きました。
比較のため、他の半導体株2銘柄も見てみます。128日のうち、TAIEXと同じ方向で引けたのは聯発科技が93日、聯華電子が90日でした。
では、TAIEXは単にTSMCを追っているだけなのか
長い期間で見ると、そうではありません。2026年4月14日から10月19日までの値動きは次のとおりです。
- TAIEXは36,296.12から46,822.08へ +29.00% 上昇しました。
- TSMCはNT$2,055からNT$2,420へ +17.76% 上昇しました。
- 聯発科技はNT$1,720からNT$4,205へ +144.5% 上昇しました。
- 聯華電子はNT$59.70からNT$131.50へ +120.3% 上昇しました。
これらは価格の変化で、価格指数と同じく配当を含みません。指数はTSMCより大きく上昇しました。つまり、他の銘柄が全体としてより大きく上昇したということです。41%のウエートが決めるのは、日々の値動きのうちTSMCに由来する分の大きさです。指数をTSMCの写しにするわけではありません。
韓国と比べるとどうか
韓国のKOSPIにも似た構図がありますが、1社ではなく2社です。KOSPIの値動きはなぜ大きいのかの解説によると、2026年10月13日にサムスン電子とSKハイニックスはKOSPIの時価総額の約48%を占めていました。
2つの指数の振れ幅は異なりました。同じ4月14日から10月19日までの期間を、それぞれの市場の営業日で見ると次のとおりです。
| 指数 | 値動きの日数 | 3%以上の値動き | 1日の平均値動き |
|---|---|---|---|
| TAIEX(台湾証券取引所) | 128 | 13 | 1.34% |
| KOSPI(韓国取引所) | 124 | 46 | 2.87% |
このウエートは台湾のファンドにとって何を意味するのか
金融監督管理委員会(FSC)によると、台湾のファンド規則は通常、1社への投資を純資産額の10%までに制限しています。2026年4月24日付のFSCの命令は、1つのケースについてこれを緩和しました。台湾株のみに投資する国内株式ファンドと、同種のアクティブ上場投資信託(ETF)は、TAIEXの10%超を占める 上場銘柄を保有できます。ただし、次の2つの上限があります。
- 保有比率は、その銘柄のTAIEXにおけるウエートを超えてはなりません。
- その銘柄の株式と、同社の社債・金融債の合計は、ファンドの純資産額の 25% を超えてはなりません。
FSCは、この変更が市場全体の時価総額に占める少数の大型上場企業の比率上昇を反映したものだと説明しています。発表資料は特定の企業名を挙げていません。9月30日のTAIFEXの表では、10%を超えていたのはTSMCだけでした。
日々の動きはどこで確認できるのか
台湾半導体マップは、TSMC、聯発科技、聯華電子、日月光など台湾の半導体株を時価総額の大きさで表示し、その日の騰落率で色分けしています。TSMCのウエートが一目でわかります。TSMCはニューヨークでも米国預託株式として取引されています。2つの株価の比べ方はTSMと2330の解説で紹介しています。
出典
- The TAIEX Methodology (amended April 2023)
- TWSE Index Series (TAIEX base date, base value, launch date)
- TAIEX constituents and their share of market value (臺灣證券交易所發行量加權股價指數成分股暨市值比重), data date September 30, 2026
- Trading Mechanism Introduction (trading hours, daily price limit)
- Press release: domestic equity funds and domestic equity active ETFs may invest up to 25% in a single company's stock (April 23, 2026)
- Order on Article 10, Paragraph 1 of the Regulations Governing Securities Investment Trust Funds (金管證投字第1150381494號, April 24, 2026)
関連記事
解説のほかの記事
- 半導体株ヒートマップ解説:アジア太平洋の半導体マップの読み方マーケットマップ
- 米国口座から見るアジア半導体株:SKHY、TSM、KXIAYなどのティッカー解説
- メモリーは誰が何を作るのか:アジアと米国のDRAM・NAND・HBM解説
- 日本の半導体株の買い方:東京上場株、OTC ADR、ETFガイド
- 海外から台湾株を買う方法:TWSE上場株、TSM、ETFガイド
- 3nmと2nmとは何か?半導体プロセスノードを解説解説
- 米国の対中半導体輸出規制をわかりやすく解説解説
- CoWoSとは何か TSMCの先端パッケージングとAI半導体のボトルネック解説
- ファウンドリー、ファブレス、IDM:半導体メーカーの分業の仕組み解説
- サムスン電子はなぜ決算を2回発表するのか、他の半導体大手の発表方法解説
- SOXX・SMH・SOXQ:3つの半導体ETFはどう違うか解説
- S&P 500とNasdaq-100に銘柄が採用されるしくみ解説
- ダウ、S&P 500、ナスダック:米国の株価指数はそれぞれ何を測るのか解説
- 米国株先物の夜間取引:ダウ、S&P 500、ナスダック先物が示すもの解説
- 半導体の一日、4つの終値:ソウル・台北・東京・ニューヨーク解説
- 日本の信用取引残高データ:キオクシアについて何がわかるか解説
- 日本国外から見るキオクシア:東京の285AとOTCのKXIAY解説
- キオクシアの1対3株式分割:株価の推移をどう読むか解説
- マイクロンの決算期:四半期がサムスン電子とずれる理由解説
- 日経225とTOPIX:半導体株で値動きがこれほど違う理由解説
- フィラデルフィア半導体株指数(SOX)とアジアが注目する理由解説
- 台湾株の1日10%値幅制限と、海外投資家に関わるその他の取引ルール解説
- TSM対2330:TSMCの米国株が台北より高く取引される理由解説
- TSMCの月次売上高:台湾の月次売上報告の仕組み解説
- 外国人投資家はどのようにKOSPIを動かすか:日次データの見方解説
- 2026年に韓国株を買う方法:米国・シンガポール・英国からの4つの経路ガイド
- 韓国外からサムスン電子株を持つ方法:ソウル上場株・ロンドンGDR・ETFガイド
- コリア・ディスカウントとバリューアップ・プログラムをやさしく解説解説
- KOSPIヒートマップの読み方:韓国マーケットマップ入門マーケットマップ
- MSCIはなぜ韓国を先進国市場に格上げしないのか、何が変われば動くのか解説
- サムスン電子とSKハイニックスのHBM比較サムスン電子とSKハイニックス
- SKHYと000660:SKハイニックスを持つ二つの方法はどう違うのかサムスン電子とSKハイニックス
- KOSPIはなぜ変動が大きいのか:半導体、外国人資金、ウォン解説