サムスン、HBMの重要チップをTSMCに委ねるのか?
サムスン電子は、エヌビディア(Nvidia)向けカスタムHBMの最下層のチップ(ベースダイ)をTSMCの3nmプロセスで製造することを決めたと報じられました。 HBMは、AIチップと組み合わせて使われる積層型の高帯域幅メモリーです。報道によると、エヌビディアは供給元3社のサムスン、SKハイニックス、マイクロン(Micron)のすべてに、同じプロセスを使うよう求めました。
最初に報じたのはソウル経済新聞で、10月18日のことです。ロイターは、サムスンがHBMの製造段階でTSMCと手を組むのは初めてになると伝えました。ただし、サムスン、エヌビディア、TSMCのいずれも公式には確認していません。
HBMのベースダイは何をするのか?
DRAMの積層の最下部にある「頭脳」チップ
HBMは、複数のDRAMチップを縦に積み重ねて作るメモリーです。積み重ねたDRAMチップはコアダイと呼ばれます。一番下にある1枚のロジックチップがベースダイです。
ベースダイはデータを保存しません。AIチップとメモリーの間の案内役として、信号をやり取りし、電力を分配します。
NVHBMはメモリーコントローラーをベースダイに移す
エヌビディアは8月26日、カスタムHBMのNVHBMを発表しました。これまでAIチップの中にあったメモリーコントローラーを、ベースダイに移すものです。その結果、ベースダイはメモリー用のプロセスではなく、先端ロジックのプロセスで作る必要があります。
エヌビディアが示した数値は、標準的なHBM4Eと比べて次のとおりです。
- スタックあたりのメモリー帯域幅が最大30%増加
- HBMの消費電力が最大15%減少
- 演算に回せるAIチップの面積が最大25%増加
いずれもエヌビディアが発表した目標値で、量産出荷は2027年の見込みです。NVHBMは、エヌビディアのチップ接続技術NVLink Fusionを使うカスタムAIチップ向けに発表されました。
サムスンはなぜ自社のファウンドリーではなくTSMCを選んだのか?
エヌビディアが3社すべてに同じプロセスを求めた
報道によると、エヌビディアは3社に対し、ベースダイはTSMCの3nmプロセス、その上に積むDRAMは第6世代(1c)プロセスに統一するよう求めました。どの供給元でも同じ方法で製品を作れば、性能がそろいます。検証も一度で済みます。
歩留まりの差も理由に挙げられています。TrendForceは業界の推計を引用し、TSMCの3nmの歩留まりを90%超、サムスン・ファウンドリーの2nmを約60%としました。
これまでサムスンはベースダイを自社で製造してきた
- サムスン:今年量産を始めたHBM4のベースダイを、自社の4nmプロセスで製造
- SKハイニックス:2024年4月、HBM4のベースダイでTSMCとの提携を発表
メモリーからロジックまで1社ですべてを作る「ターンキー」方式は、長くサムスンならではの強みとされてきました。報道によると、サムスンはこの方式を捨てるわけではありません。標準HBMと、AMDなど他の顧客向けのカスタムHBMは引き続き自社で製造します。TSMCの生産能力が足りない場合に備え、サムスン・ファウンドリーの2nmプロセスをバックアップとして使うことも検討しています。
報道が株価に表れたかを確かめるため、両社の株価を9月1日=100として指数化しました。
サムスン電子の株価は、報道後もあまり動きませんでした。10月16日は215,500ウォン、10月26日は213,000ウォンで、ほぼ横ばいです。株価を揺さぶったのは、この報道よりも10月中旬の半導体株の全面安でした。
メモリーとファウンドリーの競争にとって何を意味するのか?
先端ファウンドリーを持つ企業の発言力が増す
HBMの頭脳が先端ロジックチップになるにつれ、メモリーメーカーでさえファウンドリーなしではHBMを作れない構造へと業界は向かっています。
TSMCは10月15日に第3四半期決算を発表しました。売上高は1.4942兆台湾ドルで、前年同期比**50.9%**増でした。純利益は68.7%増えました。プロセス別では3nmがウエハー売上高の33%を占め、最大でした。
HBMの勝負は積層するDRAMへ移る
3社のベースダイが同じなら、差は上に積むDRAMで決まります。歩留まり、積層技術、熱管理が勝負を分けます。
HBMは生産能力に占める割合も高まっています。サムスン電子のキム・テウ(Kim Tae-woo)副社長は9月29日、業界のDRAMウエハー生産能力に占めるHBMの割合が、現在の約20%から来年は30%近くに高まると述べました。HBMと標準DRAMは同じウエハーを使います。このため、標準DRAMの供給が逼迫する可能性があります。
注目すべき3つの点
- サムスンとエヌビディアが公式発表で報道を確認するか
- SKハイニックスとマイクロンも同じ条件を受け入れたか
- サムスン・ファウンドリーの2nmプロセスが、実際にバックアップの供給元に指名されるか
本稿は2026年10月27日までに公表された報道に基づくもので、投資助言ではありません。
よくある質問
Q1. サムスン・ファウンドリーはTSMCに後れを取っているということですか?
A1. そう断定するのは難しいです。報道によると、今回の件はエヌビディアが供給元3社すべてに同じプロセスを求めた結果です。サムスンは、その他のHBMや他の顧客向けの製品は引き続き自社のファウンドリーで製造すると報じられています。
Q2. 一般の消費者にも影響はありますか?
A2. 間接的に影響する可能性はあります。HBMがDRAMウエハーをより多く使うようになれば、パソコンやスマートフォン向けの標準DRAMの供給が減るとの見方もあります。実際に価格に表れるかどうかは、市場の状況次第です。
出所:ロイターおよびTrendForce(2026年10月19日、ソウル経済新聞の報道〈2026年10月18日〉を引用)、エヌビディアのNVHBM発表(2026年8月26日)、TSMCの第3四半期決算発表(2026年10月15日)、キム・テウ副社長の発言に関するロイター報道(2026年9月29日)。株価:KRXおよび台湾証券取引所の通常取引終値。トップ写真:サムスン電子 / Samsung Semiconductorウェブサイト
情報提供のみを目的としたもので、投資助言ではありません。