決算よりAI投資:TSMC株が下落した3つの理由
2026年10月30日、台湾のTAIEX指数は2.49%安の45,211.83で取引を終えました。取引時間中には44,726まで下げました。10月6日の過去最高終値から10%を超える下落です。TSMCの株価は、前四半期の決算ではなく、顧客がAIへの投資を続けるかどうかで動いています。その懸念が強まるなか、株価は半月で4.8%下落しました。決算発表前日の2,490台湾ドルから2,370台湾ドルへの下げです。
10月30日の台湾市場で何がどれだけ下がったか
TAIEXは1日で1,156.50ポイント下げました。半年移動平均線(直近およそ120営業日の平均、約45,315)を終値で下回ったのは、2025年6月以来です。
- TSMC:1.86%安の2,370台湾ドル。指数の下げのうち約360ポイント分を占めました
- メディアテック(MediaTek):3.21%安
- ASE(半導体のパッケージング・検査):2.20%安
- Alchip(AI向けカスタム半導体の設計):6.93%安
資金はディフェンシブ銘柄に移りました。通信大手の中華電信(Chunghwa Telecom)は1.27%高でした。食品大手の統一企業(Uni-President)は1.52%高でした。
グラフを見ると、今年の上昇幅の大きさがわかります。指数は2025年最終営業日の28,963.60から、10月6日の49,822.55まで72%上昇しました。
TSMCの第3四半期決算はどれほど好調だったか
TSMCは10月15日、第3四半期の売上高が467.2億ドルだったと発表しました。前年同期比41.2%の増加です。3カ月前に示した会社予想(446億〜458億ドル)の上限も上回りました。
- 純利益:7,630億台湾ドル(前年同期比68.7%増)
- 売上総利益率:66.4%
- 売上高の68%は、エヌビディア(Nvidia)のGPUなど高性能コンピューティング(HPC)向け
- ウエハー売上高に占める2ナノメートルの比率:1四半期で3%から8%に上昇
- 第4四半期の売上高見通し:523億〜543億ドル
過去最高の決算でもTSMC株が下落した3つの理由
1. 株価は次のAI投資を見ている
TSMCの決算は、顧客がすでに使ったお金を反映しています。株価が先に織り込むのは、エヌビディアやグーグル(Google)などの顧客が来年も半導体を発注し続けるかどうかです。
台湾市場の10月30日の取引を前に、前夜の米国ハイテク株は下落しました(ナスダック100に連動するQQQは1.42%安)。現地のアナリストは、グーグルとインテル(Intel)が見通しを発表した後、AIに投じた資金が見合うだけの利益を生むのかという疑問が再び浮上したと指摘しました。
2. 外国人投資家が台湾株の純売りを続けている
外国人投資家による台湾株の純売りは、10月30日の1日だけで1,124.7億台湾ドルでした。過去7番目の規模です。10月全体では9,943億台湾ドルの売り越しでした。1カ月としては過去最大です。
決算発表当日の10月15日には、米国の9月の物価指標が予想を上回ったことが追い打ちとなりました。外国人投資家の売りは約3,025億台湾ドルに達しました。データがある2004年以降で、1日として最大の規模です。TSMCはこの日2.01%下落し、翌日もさらに0.82%下げました。TSMCは台湾市場の時価総額で最大の比重を占めます。そのため、外国人投資家が台湾株の保有を減らすと、最も大きな打撃を受けます。
3. 大きく上がった分、利益確定売りが出やすい
今年72%上昇した市場では、小さな失望でも「まず利益を確定しよう」という売りが出やすくなります。10月30日は売買代金がさらに縮小しました。アナリストは、米中間選挙(11月3日)を前に押し目買いが少なかったと述べています。
株価は10月6日の2,585台湾ドルから10月30日の2,370台湾ドルまで8.3%下落しました。決算発表後も、目立った反発はありませんでした。
次の営業日に注目する4つの点
- 米国のADR:台湾市場の取引終了後、TSMCのADR(米国預託証券、TSM)は10月30日の米国市場で5.95%安の406.13ドルで引けました。11月2日の台湾市場の重荷になる可能性があります。
- 高値から10%:終値ベースで、指数は9.26%下落しています。44,840を下回って引けると、一般に「調整局面」と呼ばれる水準に入ります。
- 半年平均の45,315を回復するか:筆者は、指数が終値でこの水準を上回るかどうかに注目しています。
- 外国人投資家の純売りの規模:筆者は、1日あたりの外国人投資家の純売りがこの水準から縮小するかどうかに注目しています。
景気そのものは堅調です。10月30日に発表された台湾の第3四半期の経済成長率の速報値は14.36%でした。4四半期連続の2桁成長です。今回の下落は景気よりも、AI投資への期待が揺らいだ結果といえます。
この記事は2026年10月30日の終値に基づいています。特定の銘柄や商品についての投資助言ではありません。
よくある質問
Q1. TSMCの台湾上場株は、なぜ決算発表後も下げ続けたのですか?
A1. 決算ではなく、来年の顧客のAI投資の見通しと外国人投資家の売りに連動して動いたためです。発表前日の2,490台湾ドルから、10月30日の2,370台湾ドルまで4.8%下落しました。
Q2. TSMCの台湾株と米国ADRは、なぜ違う動きをするのですか?
A2. 取引時間が異なるためです。台湾市場の取引終了後に米国で出たニュースは、まずADRに表れ、次の営業日に台湾上場株に反映されることがよくあります。
Q3. 台湾市場が揺れると、韓国の半導体株も下がりますか?
A3. 連動することがよくあります。TSMCが2.01%下落した10月15日、サムスン電子は9.48%、SKハイニックスは11.06%下落しました。
出典:TSMC第3四半期決算発表(2026年10月15日)、Focus TaiwanおよびTaipei Times(2026年10月30〜31日)、經濟日報(Economic Daily News)およびTVBS(2026年10月30日)、台湾行政院主計総処の第3四半期GDP速報値(2026年10月30日)。株価:TAIEXおよび台湾証券取引所の終値、米国の通常取引終値(株式分割などを調整済み。ADR、QQQ)、KRXの通常取引終値
情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。