AI銘柄としてのキャタピラー 中間選挙後のデータセンター規制が直撃した理由
11月5日、S&P 500 ETF(SPY)は4.41%下落しました。同じ日、油圧ショベルメーカーのキャタピラー(Caterpillar、CAT)は6.37%下げ、553.64ドルで取引を終えました。中間選挙の翌日から2日間の下落率は11.3%です。選挙結果はとどめの一撃でした。キャタピラーは選挙前の1か月ですでに27.6%下落していました。成長の中心はデータセンター向け発電機です。そのため、データセンターの承認を止めるという公約は、同社の弱点を正面から突きました。
キャタピラーの株価:高値から47%下落
キャタピラーは6月30日に過去最高の終値1,060.41ドルを付けました。その後、7月から9月は800ドル台で上下しました。流れが変わったのは10月です。11月6日の終値は558.63ドルで、高値から47.3%下落しました。今年の上昇分はすべて消えました。
グラフでは、10月以降に階段状の下落が続いています。週足の終値で見ると、5週連続で下落しています。
油圧ショベルメーカーがAI銘柄になった理由
キャタピラーと聞くと、まず黄色い油圧ショベルが思い浮かびます。しかし第3四半期、エンジンやタービンを手がけるパワー&エナジー部門の売上高は88億ドル(+18%)でした。建設機械部門の79.8億ドルを上回っています。このうち発電部門の売上高は30%増の34.2億ドルでした。会社は増加の要因として、データセンター向けのタービンと大型レシプロエンジンを挙げています。大型レシプロエンジンとは、ピストンの往復運動で動く大型ガスエンジンです。
データセンターが自前の発電機に頼るのは、送電網への接続に時間がかかりすぎるためです。米ローレンス・バークレー国立研究所によると、2024年に稼働した発電所は、送電網への接続申請から運転開始まで中央値で55か月かかりました。このため、敷地内にガス発電所を建てて自家発電するデータセンターが増えています。
その代表例がメタ(Meta)のオハイオ州のデータセンターです。専用のガス発電所には、キャタピラー子会社ソーラー・タービンズ(Solar Turbines)のタービン12基と、キャタピラーの3520エンジン15基が使われています。AIの計算で電力使用量が急に変動しても、エンジンはすばやく対応できます。負荷を多くの機械に分散するため、1基が止まっても発電所は動き続けます。
中間選挙後のデータセンター規制がキャタピラーの足を引っ張った3つの理由
1. 成長の中心がデータセンター
キャタピラーの第3四半期末の受注残高は780億ドルでした。前年同期比で96%(約380億ドル)増えています。同社は大型レシプロエンジンの生産能力を2024年の3倍に、ガスタービンを2.5倍に拡大しています。将来の成長がデータセンターからの受注にかかっています。そのため、データセンターの建設が減るというニュースには、最も敏感に反応する銘柄の一つになります。
2. 選挙前からすでに弱かった
株価は10月6日の861.39ドルから、選挙当日の11月3日には623.94ドルまで、27.6%下落しました。
- 10月22日、-4.88%:メタがAI投資計画の拡大を発表した後、その資金をどう調達するのかという懸念が広がりました。この日、ガスタービンメーカーのGEベルノバ(GE Vernova)は10.64%、データセンター向けの冷却・電源設備を手がけるバーティブ(Vertiv)は7.81%下落しました。
- 10月29日、-9.25%:第3四半期の売上高207億ドル(+17%)と調整後1株利益7.20ドルは、市場予想(7.04〜7.10ドル)を上回りました。しかし通期見通しは引き上げられませんでした。関税の還付分を除くと、通期の調整後営業利益率は目標レンジの下限にとどまるとの説明もありました。
3. 選挙結果がとどめを刺した
11月3日の中間選挙で、民主党は上院と下院の両方で勝利しました。テキサス州知事選では、民主党のジーナ・イノホサ(Gina Hinojosa)氏が現職のグレッグ・アボット(Greg Abbott)知事を破りました。イノホサ次期知事は、住民を守る法律が整うまで新規データセンターの承認を止めると公約しています。データセンターへの税優遇の廃止も掲げています。
テキサス州は重要です。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)によると、米国で計画中のデータセンター容量の25%超がテキサス州に集中しています。このため11月4日、SPYが1.65%上昇するなかでも、キャタピラーは5.23%下落しました。翌日、市場全体が崩れると、さらに6.37%下げました。
同じ期間(10月6日〜11月6日)、SPYの下落率は5.6%でした。一方、キャタピラーは35.1%、GEベルノバは24.7%下落しました。データセンター向け電力関連株は、市場全体よりはるかに大きく揺れました。
それでも成長が見込める点
- 実際の販売は伸びている:ディーラーを通じた最終顧客への発電設備の販売は、第3四半期に75%増えました。
- 供給を増やしている:生産を終えていた10MW級ガスエンジンの生産を再開し、約1.5GWを上積みします。初出荷は第4四半期の予定です。
- 受注は先まで埋まっている:会社によると、一部の製品は2029年まで受注が入っています。
反対の見方
- 規制はまだ公約の段階:イノホサ次期知事の承認停止は、まだ法律になっていません。テキサス州は8月の時点で新規データセンターの送電網接続の承認をすでに止め、監査を行っていました。このため、新たな規制というより「停止が長引くリスク」に近いといえます。
- 送電網の待ち時間は変わらない:規制とは別に、送電網への接続に何年もかかるという事情は変わっていません。
- 受注残はキャンセルされうる:大手テック企業が投資を減らせば、受注残は急速に細る可能性があります。ガスタービンでは、GEベルノバやシーメンス・エナジー(Siemens Energy)との競争もあります。
今後の注目点
- 1月のテキサス州新知事の就任と、州議会でのデータセンター関連法案
- 大手テック企業の2027年の設備投資計画
- 第4四半期決算で受注残が増え続けるか
- 生産を再開したガスエンジンの第4四半期の初出荷
一言でいうと
キャタピラーを押し下げたのは選挙だけではありません。データセンターに託された成長期待が1か月以上冷え込んでいたところに、データセンター承認停止の公約がとどめを刺しました。
この記事は2026年11月6日(米国市場終値)時点の情報に基づいています。特定の銘柄や商品への投資助言ではありません。
よくある質問
なぜ中間選挙はキャタピラーにとって悪材料なのですか?
キャタピラーは、データセンター向けのガスエンジンとタービンの受注で成長しています。そこに、テキサス州などで新規データセンターの承認を止めるという公約が出てきました。ただし、株価は選挙前にすでに27.6%下落していました。
キャタピラーとデータセンターはどう関係していますか?
キャタピラーのエンジンと、子会社ソーラー・タービンズのタービンは、データセンターの敷地内に建てられるガス発電所に使われています。発電部門の売上高は第3四半期に30%増えました。
キャタピラーの受注残高はどのくらいですか?
第3四半期末で780億ドルです。前年同期比で96%増えました。4四半期連続の増加で、過去最高です。
出典: 米国株の通常取引終値(株式分割・配当を調整済み)、キャタピラー第3四半期決算発表および決算説明会(2026年10月29日)、Power Engineering(メタのオハイオ州発電所)、Lawrence Berkeley National Laboratory「Queued Up 2025」、Manufacturing Dive(生産能力)、Reuters(2026年11月4日・5日)、CNBCおよびWashington Post(2026年11月5日)
情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。